大阪医療大学 学校法人塚本学院 大阪芸術大学グループ 2026年 令和8年度 開学

少数精鋭で、医療のスペシャリストに。

Interview

大阪医療大学併設 脳卒中再生医療のクリニックとは?

「脳卒中再生医療センター」院長
福富康夫先生に聞く

福富康夫先生(「脳卒中再生医療センター」院長)

「リハビリテーションと
再生医療は両輪」。
クリニック×大学を、未来の
仲間が生まれる豊かな場に

大阪医療大学のキャンパスのうち、理学療法学科の授業の多くが行われる本学2号館(円形校舎)の1階。そこに2025年6月にオープンした、脳卒中を専門とする再生医療のクリニック「脳卒中再生医療センター」には、脳卒中の後遺症などで悩む患者さんが全国から日々訪れます。近年注目と期待の集まる再生医療の分野にいち早く取り組み、その臨床の最前線を切り拓いてきた福富康夫院長(医療法人大雅会/ふくとみクリニック理事長)に、国内ではまだ希少な再生医療に特化したクリニックと、そこで今後より大きな役割を担っていくであろう理学療法の可能性についてお話を伺ってきました。

自己治癒能力を使って改善に導く
再生医療のいま

そもそも「再生医療」はどのようなものか。平たく説明すると、誰もがもともと身体の中に持っている自己治癒能力を使った治療全般のことを指しています。人間の「幹細胞」(神経や血管など、身体のあらゆるものに成長することのできる多能性の細胞)は、年を重ねるごとにだんだん目減りしていきます。その限られた幹細胞でけがや病気を一生懸命治すのではなく、最新技術を用いて培養し、体内に再び戻すことで、自己治癒能力を何十倍にも増幅させ、よりスピーディーに症状を良くしていくというのが再生治療の大まかな考え方です。

そのなかでも、脳卒中(脳梗塞、脳出血)全般に特化し、脳の神経細胞が機能を失うことで身体が思うように動かなくなったり、従来の生活やコミュニケーションが困難になってしまった患者さん一人ひとりの希望に寄り添って、治療やリハビリテーションに当たっているのが当院の特徴です。全国的にはこういったクリニックはまだまだ数少ないため、当院には全国から多くの方が相談に来てくださっています。

再生医療のメソッドはここ数年でほぼ確立され、特に脳卒中においては、ごく小さな変化を含めれば約9割に上る患者さんの症状を、再生医療の力で和らげることができるようになりました。今後は治療効果をより確実性なものにしていくことが、現場での目下の課題です。

自己治癒能力を使って改善に導く再生医療のいま

患者さんを囲む
医師・理学療法士・スタッフのトライアングルで
笑顔を増やしていきたい

幹細胞を患者さんから採取・培養してご自身の体内に戻す過程と、その後それらがしっかり機能するよう身体に働きかけ、新たな動作や対処のしかたを訓練するリハビリテーションの過程。この二つはまさに車の車輪のようなもので、どちらかが欠ければ十分な治療とは言えません。リハビリなしでは、そもそも幹細胞を身体に入れても意味がないのです。脳卒中の患者さんにおいては特にそうで、脳外科医は命の瀬戸際で患者さんを救ってはくれますが、その後社会復帰を目指していくためには、中長期的な目線に立ったリハビリとそのプランの提案が必要不可欠です。

ただ、多くの医療現場は、医師の指示を受けて理学療法士がリハビリを行うという体裁上、理学療法士が十分な裁量を持てているとは言いがたい状況です。理学療法士の地位や自由度を上げていくことも、当院では目指していきたい。

私が知る限り、理学療法士は働きながら熱心に勉強を重ねている人がほとんどです。ノウハウでは医師にまったく負けていないし、実地で患者さんと多く接している分、より確かな治療のアプローチや対応を肌感覚でわかっている。これは受付スタッフにも同じことが言えます。当院では、スタッフ同士がフラットな関係を築くことで、医師・理学療法士・受付スタッフと、その中心にいる患者さんのトライアングルの全員が笑顔になれる環境を作っていきます。

患者さんを囲む医師・理学療法士・スタッフのトライアングルで笑顔を増やしていきたい

「元に戻らない」ことに
寄り添える心

相談に来てくれた脳卒中の患者さんとの最初のカウンセリングで、治療を経てどうなりたいかを尋ねると「元の状態に戻りたい」と答える患者さんが一番多い。そのとき私が必ずお伝えしているのは、「完全に元に戻ることはない」という現実です。

左半身不随になった人が治療を通して、左手を以前よりもごくわずか、数センチでも上に持ち上げられるようになったとしますよね。その手は書き物をするときに、ノートを押さえる文鎮になる。そんなミニマムな変化でも、かつては「もうダメや、何もできない」と思っていた患者さんの生活においては大きな前進で、心も少しずつ前向きになっていく。そこにはすごく大きな価値があると思うんです。

理学療法士に求められる資質は、何より「心」だと私は思います。決して元通りにはならないという苦しみや辛さを理解できる心がある人。そのうえで、笑顔のために動くことができる人。それは患者さんの笑顔でもあるし、彼らのご家族や、一緒に働く職員の笑顔、ひいては地域や日本の笑顔になる。そのためにはやはり、患者さんにとっての一番良い選択肢は何かを、そのつど考えながら接すること。そして、医療従事者である前に人であることを忘れない心が大切なんじゃないでしょうか。

施設内写真

施設内写真

診察室。患者さんやそのご家族へのヒアリングをもとに、もっとも適した治療方針をここで話し合い検討します。初診時のカウンセリングは長時間に及ぶことも。

施設内写真

点滴室。幹細胞を投与する部屋です。個室となっているため安静に過ごせることができます。またリハビリを行えるスペースも確保されています。

施設内写真

処置室。骨髄を採取する部屋です。手術室と同様の基準で清潔を保てる設備になっています。

施設内写真

リハビリホール。理学療法学科の学生もリハビリ中の様子を見学できる、開放的な空間です。

Message

理学療法の
未来を担うみなさんへ

実は私自身も、10年と少し前に小脳梗塞で倒れ、従来通りに働くことが叶わなくなった経験があります。今後の人生に希望を失っていたその時期に、リハビリを通して自分を支え救ってくれた理学療法士が、現在では当院のリハビリ領域の主任として、患者さんの症状改善に尽力してくれています。

当院のすぐ横を通って毎日授業に向かう理学療法学科の皆さんが、我々が患者さんとしているリハビリの様子を日常的に見られて、患者さんにもそれをいいねと思っていただけるようなリハビリホールの空間は、この特徴的な円形の校舎を生かし、一生懸命考えたものです。今現在は、再生医療が実際に行われている現場を目の当たりにしたことがある人は世界中でもごくわずかですが、見たことがないものは知識にはならない。大阪医療大学は、その最先端に触れられる場所として、今後広く知られていってほしいですね。

今後、より普及が進んでいくであろう再生医療の領域で、理学療法士の力を必要とするクリニックや病院もさらに増えていくでしょう。患者さんとのやりとりや、その背景にある葛藤や喜びを目や耳で感じ取り、共感できる心。これらを胸に、将来私たちと一緒に再生医療の存在を社会に広めてくれる、あるいは一緒に働いてくれる理学療法のプロが、ここから育っていくことを期待しています。

福富康夫先生(「脳卒中再生医療センター」院長)

福富康夫(ふくとみ やすお)

医療法人大雅会 ふくとみクリニック理事長
脳卒中再生医療センター院長
特定認定再生医療等委員会(NA8150032)代表
日本再生医療学会員

  • 1998年 愛媛大学医学部卒業
  • 1999年 高槻病院 小児外科
  • 2009年 ふくとみクリニック開院
  • 2012年 民間で初めて骨髄幹細胞培養による「脳卒中再生医療」を開始
  • 2013年 小脳梗塞で倒れ、脳卒中再生医療を自身にも行う
  • 2014年 医療法人大雅会設立
  • 2016年 厚労省より特定認定再生医療等委員会 (NA8150032)代表に認定される

脳卒中再生医療センター(完全予約制)

詳しくは脳卒中再生医療センターの
Webサイトをご確認ください。

脳卒中再生医療センター